07/20
・韓国、MERS沈静化 新規感染者、5日以降ゼロも観光はなお深刻な打撃
・自民農林族、TPP妥結にらみ予算確保狙う 農業対策「最低1兆円」
参院選を意識 減り続けているとはいえ農家なお約250万戸
07/21
・米キューバ国交回復 54年ぶり、大使館再開
・BRICS、昨年GDP7.5%増 購買力平価ベースでG7に肉薄 <1>
中印けん引、物価格差調整ベースで世界GDPの30%超える
・国際商品下げ加速 NY原油一時50ドル割れ ドル高で割高感
金8日連続続落、5年半ぶり安値 プラチナも6年半ぶり1オンス=1000ドル割れ
・ギリシャ、欧州中銀保有国債償還 IMFが支援再開へ
07/22
・日本の対中投資(1-6月)16.3%減 全世界の対中投資は8.3%増 <2>
・習政権「反腐敗」緩めず 景気減速、社会不満を意識
20日胡錦濤前主席側近の党籍剥奪 最高裁幹部も標的に 党の権威が傷つくジレンマも
07/23
・訪日客、年2000万人ペース 1-6月46%増の913万人
・三菱自動車、米生産撤退へ すでに欧州から撤退 東南アジアに拠点集中 <3>
ドル高で輸出苦戦 「アジアモーター」として生き残る戦略
日本車メーカーの東南アジアシェアは約8割 10年間で2倍近く増え昨年販売310万台
07/24
・日本対中赤字、過去最高に 1-6月約3兆円 自動車輸出急減、スマホ輸入増加
・日本4-6月期GDP 民間予測マイナス拡大 輸出伸び悩みで
IMF年次審査報告「日本成長0.7%前後」追加緩和と財政健全化が不可欠と指摘
・日本経団連の榊原会長 移民受け入れ「議論加速を」
政府試算で人口は2060年までに4000万人減少 「移民に頼らざるをえない」
⇒ポイント解説あります
・韓国経済。強まる停滞感 4-6月0.3%成長 MERS追い打ち <4>
住宅市況上向きも百貨店売上高30%減 利下げで不動産好調も家計負債増加の副作用
・明治安田生命、米生保買収 買収額6200億円は国内生保最大
昨年は第一生命が5800億円で米生保買収 国内は人口減少で成長期待できず
07/25
・NY株4日続落 24日163ドル安の1万7568ドル 原油安や業績懸念、重荷
・タイ、コメ輸出首位転落も 続く干ばつ、前政権の高値買い取り策失敗 <5>
大量の在庫米 農民の債務増大 景気浮揚の重荷に
07/26
・日本国債購入 外国人買い越し(1-6月)100兆円超え 保有率も9.4%に
・海外投資家、中国株離れ 7月売越額、過去最大の約6600億円 <6>
政府の過度な介入による「官製相場」に不信感
ポイント解説(17) 07/20~07/26
経団連会長、移民受け入れ「議論加速を」
経団連の榊原会長が23日、人口減少社会への対応として「移民に頼らざるを得ない。(閉じている)ドアを開けにいかないといけない」と述べ、産業界から具体的に提言していくべきだと強調しました。
低成長が続く日本経済最大の課題は少子高齢化と財政赤字ですが、どれも人口減少が大きく関わっています。すでに日本の人口は毎年30万人ほど減っていますが、国立社会保障・人口問題研究所は2030年代には毎年830万人減少する一方で2035年には85歳以上の高齢者の人口は1000万人に達すると報告しています。政府試算でも2060年までには4000万人程度減るというのです。将来の問題としても深刻ですが、今でも労働人口は毎年50万人減っています。いったい誰が経済成長を担い社会保障コストを支えていくのでしょうか。経団連会長は「移民に頼らざるを得ない」と危機感を表明したのです。
財界の要望はほとんど受け入れてきた安倍首相ですが、昨年10月の衆院本会議では「いわゆる移民政策をとることは考えていない」と断言しました。労働力不足は女性と高齢者に期待しているようですが、どう考えても無理があります。アベノミクス、つまり異次元の量的緩和と財政出動でもGDPが増えないのは(たくさん理由がありますが)前提として労働力が不足しているからです。
日銀の試算でも日本の潜在成長率、つまり生産要素をすべて効率的に使った場合でも成長率は0%台前半ですが、人口が減り労働力が不足し市場が縮小して投資が伸びないからです。新国立競技場の建設費用が人件費の高騰などによって大きく膨らんだことが問題になりましたが、ようするに需要が増えても人手不足で供給の限界にぶつかる典型ですね。同じ23日にIMF(国際通貨基金)が日本経済に関する年次報告書を発表しましたが、日本の中期的成長率は0.7%程度にとどまり、その根拠といてあげられているのが労働力不足でした。明治生命が6200億円でアメリカの中堅生保を買収しましたが、それも国内では人口減少で収益が見込めないからです。三菱自動車がアメリカでの生産から撤退し東南アジアに拠点を集中すると発表しましたが、円安でも製造業の国内回帰は遅々として進んでいません。日本では労働力不足で人件費がかさみ、自動車を作ってもそれを買う若者がいないからです。
アメリカやカナダ、オーストラリアのような移民国家は別としても、ヨーロッパの人口に対する移民の比率は10~20%ですが、日本は1%台です。毎年20万人、30万人の移民を受け入れても10%になるには何十年もかかります。問題は「移民を受け入れない」ことより「移民政策を考えない」ところにあります。いつかは考えなくてはいけないのに考えないのですから。
たしかに移民政策は国民にとって不人気です。「日本の文化・伝統がくずれる」、年間20万人の移民でくずれるほど日本の文化はもろいのでしょうか。「治安が悪くなる」、アジアで最も移民比率の高いシンガポールの治安は日本より悪いのでしょうか。ここで問題にしているのは「外国人労働者」ではなく「移民」です。日本国籍を持ち日本の教育を受け定住する人々です。むしろ人口減少は公共サービスの低下を生みます。警察も消防もしかり、鉄道も学校もどんどん日本から消えていってしまっています。「雇用が奪われる」、人口が減少してどうして雇用が保たれるのでしょうか。そして何よりも莫大な社会保障費を誰の税金で賄うのでしょうか。高齢者介護人材も10年後には100万人以上不足するのです。地方ではもっと深刻かつ急速に人口減問題が進んでいます。人がいなければ電車も止まらず駅もなくなり車の走らない高速道路だけが残されます。地方の若者は都市に流れ都市部では出生率が大幅に低下します。一方で一定以上の規模の移民受け入れは、新しい需要を生みます。異文化が新たな産業やサービスを生み出すパワーとなる例はたくさんあります。
移民を受け入れるくらいなら小さくまとまった日本でいい、という人もいます。その気持ちはわからないではありません。しかし「小さくまとまる」にもコストが大きすぎるのです。なにより1000兆円の財政赤字を誰が負担するのでしょうか。若者が減ってそこは小さくまとまっても高齢者人口は確実に増えます。多くの有能な人材は海外に流出するでしょう。今の日本がそのままコンパクトになるわけではありません。
移民政策には社会的葛藤がともないます。外国人観光客の急増ですら、それが景気にプラスとわかっていても日常生活のささいな変化にストレスを感じるのですから。ある意味で日本以上に単一民族意識が強く個性的な文化を持つ韓国も、将来の労働力不足を案じて2007年に「外国人処遇基本法」を制定し、移民労働者の職業訓練や言語文化教育に本腰を入れてきました。そこで何より強調されたのが韓国人の意識啓発でした。移民の人権擁護を訴え5月20日を「世界人の日」と定めるなど、移民を「労働力」ではなく「隣人」である社会を目指そうとしています。もちろん順調に進んでいるとは思えません。
しかし忘れてはいけないのは移民受け入れも競争市場だということです。高度なスキルと文化的適応性を備えた移民は、当然のことながら移民政策先進国を選ぶでしょう。考えなくてはならないことが本当にたくさんあります。安倍首相は「考えない」と断言しました。ここは財界の圧力を借りて、すくなくとも「考える」ことを始めてもらいたいものです。
コメント
シンガポールの初代首相、故リークアンユー氏は「日本は移民を受け入れなければ明るい未来はない」と言いましたが、解説を読むと、移民を受け入れてもなお日本の人口減少には歯止めがかからないような気がしました。にもかかわらず、移民を受け入れるどうこう以前に「移民政策を考えない」では話にならないと思います。
ただし、移民を受け入れた欧州では、近年その反動として反移民感情の噴出や極右政党の台頭が見受けられます。このような状況を見ていると、今の日本が安易に準備不足のまま移民を受け入れるのも拙速な気もします。
だからこそ、今のうちから移民政策をまず考えなければならないと思いました。