今週の時事雑感 01/29~02/15
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし
選挙戦略としては分からないわけでもない。でもこれは大切なことだから、ここで一度正面から問い直してみよう。ネット世論とか、無党派層傾向とか、政治がそこに阿る(おもねる)方向に明るい未来はあるのだろうか、と。
中道改革連合の話をしよう。そもそも事の起こりは公明党の連立与党離脱だった。その理由は「政治とカネ」だったのだから、例えば立民と組むのならば(ぼくは選挙協力で充分だと思うのだが)掲げるべきは「政治とカネ」であるはずだ。しかしこれがどうもネット世論では「いつまでその話をしている、いい加減にしろ」なのだろう。一方で立民も立民だ。原発についても安保法制についても「現実的判断」だとか言うのだが、現場を切り捨てた“現実”に何の意味がある。反原発の現場も、反基地の現場も、平和市民運動も、かれらにとって立民は、頼るべき柱のうちの一本であったし、それは紛れもなく現実なのだ。
そこに「中道の塊」なんて言い出すのだが、それはあまりにも謎すぎる言葉だ。だれも立民を右翼だとは思っていないのだから、わざわざ中道と名乗るのは「リベラルではありませんよ」と暗に示しているだけの話だろう。つまり立民が大きく右に寄っただけ、それが中道とやらの謎解きだった。そしてそれは参政党の躍進や高市人気といった右傾化の波に埋没する立民と公明の「窮鼠猫を噛む」作戦で、ここに同じく埋没している自民党の石破さんたちも「窮鼠」扱いにして、こうなったら共に猫を噛みましょうよという妄想だった。
そんなことだから「生活者ファースト」…、高市さんの衆議院解散は生活第一ではないからという対立軸の作り方は、もうそもそもファーストでもなんでもない。そのうえで生活者のための目玉公約がなんと「食料品消費税ゼロ、しかも恒久減税」ときた。ぼくは野田さんの政治姿勢はもちろん、その政策姿勢もまた共感するところが少なくなかっただけに、驚いた。よほど窮鼠的な状態だったのだろう。これでもう見え見えだ、労組と学会の組織票に無党派層をどれだけ上積みするか、そこまではいい、問題はそこでネット世論に基本方向を阿ねてしまったことなのだ。
たしかにネット世論では、消費減税支持が圧倒多数だろう。いやオールドメディアでも、例えば朝日新聞の世論調査(2月16日)を見れば、税率維持が36%、2年間ゼロが28%、ずっとゼロが31%で、たしかにゼロが6割なのだがしかし維持も36%なのだ。同時期の日本経済新聞とテレビ東京の世論調査では、財源との関係を明示しての問いで、「赤字国債を発行してでも税率を下げるべきだ」は31%にとどまり、「社会保障の財源を確保するために税率を維持するべきだ」は59%だった。そして食料品の消費税率ゼロが物価高対策として「効果があるとは思わない」との回答が56%を占めていた。
中道改革連合に、消費税率維持の(朝日新聞なら36%の)世論に依拠して、社会保障財源確保の(日本経済新聞の59%の)世論に耳を傾ける選択はなかったのだろうか。そうではなく無党派層がそうであるようにオールドメディアに背を向け、まさにネット空間を徘徊するような怪しげな減税財源(政府系ファンド!)に飛びついたのはなぜなのか。
立民だけではない。れいわはもとより(山本太郎さんには快復して政治の舞台に戻ってきていただきたいと願う)共産党まで、消費税減税を唱え叫ぶ。ぼくは、そこにリベラルの消滅を見るのだ。消費税については「減税の財源」が問われそこが競われる風潮が固まっているのだが、その前提としては「消費税が財源」という議論があるべきだと思う。たしかに現状の消費税にはシステム的な欠陥があって、ヨーロッパの経験からもそれは何度も改修していくべきものなのだが、言うまでもなくしかし消費税は医療、年金、子育て、介護という社会保障4経費の財源なのだ。そしてそれは、まったく足りていない。だから経済学者の88%が消費税減税に反対する(1月30日付日本経済新聞)。
消費税率引き下げは、財政的には低負担低福祉という政策選択なのだ。それは個人責任の社会であり、高負担高福祉という「支え合い」の社会の否定というまさにリベラルの消滅につながる政策だ。だから物価高に苦しみながらも有権者は3割以上が消費税率の維持を支持し、半分以上が消費減税は物価高対策として有効ではないと感じているのだ。
野党で議席数を増やしたのは、消費税は減税しないと公約したチームみらいだった。議席ゼロから11議席だ。消費税廃止だろが5%減税だろうが、減税野党は議席を伸ばせなかった。自民党は「2年間ゼロ」で争点をつぶしたばかりか「検討を加速する」とぼかしたことで減税不安層をなだめた。ネット世論よりオールドメディア世論調査のほうが、じつは現実だったということだ。
もとより立憲民主党は、凄惨な原発事故を時代として背負い、解釈改憲である新安保法制に反対して再生してきた。もとより公明党は平和の党であり、日中友好は安全保障の礎だと唱え続けてきた。有権者にとっては、その視界に中道という新しい党が現われたのではなく、ただ立民と公明という2つの党を見失ってしまった選挙だった。負けに不思議の負けなし。
勝ちに不思議の勝ちあり。だからぼくは、高市さんへの贔屓の引き倒しが心配だった。高市さんは高い人気を鼻にかけて「私が総理大臣で良いのか決めていただく」と言って解散した。こんな解散理由、石破さんはもちろん小泉さんでも言えない。笑われるだけで、つまりそんなこと解散の理由にはならないのだ。そのうえ「高市総理か、野田総理か、斉藤総理か」の選択を迫った。もしかりに最高権力者を決める選挙なのだとしたら、アメリカなら10ヶ月近く討論を重ねる。街頭インタビューで若い人に高市支持理由を聞くと「わかりやすいから」と答える。「責任ある積極財政」がわかりやすい??そんなもの、ぼくには「節度ある食べ過ぎ」くらいにしか聞こえない。わかりやすいはずがない。
それはさておき、政治とカネは不問のまま、「そんなことより」議員定数削減だけどやらないで、統一教会絡みは復活させて、国保逃れの維新と連立の自民党は、戦後最多の316議席を勝ち取った。議席占有率は85.8%だが小選挙区での得票率は49.1%だった(つまり50%以上は他党に投票したのだ)。投票率は56%だったから自民党に投票したのは全有権者中26.9%となる。およそ4人に1人の投票で議席獲得率86%という、不思議の勝ちだ。
「高市1強」。2月11日付日本経済新聞では、「党ゼロ」国会として「野党にも与党にも首相にあらがう勢力が見当たらない」から「財政規律を保つには市場の反応が砦になる」と書いている。本当にそう思った。なんといっても比例名簿が足らなくなって野党にくれてやったほどだから…、あれ?そこで高市さんが解散しようとしたら、党内ではとてつもなく大きな抵抗があるだろうな…、解散できない総理なんて強いのだろうか…、自民党衆議院は任期をまっとうできるとして、高市さんには別の任期がある。自民党総裁の任期は…、来年9月までだった。
あれこれ諸材料が重なって、今のところ円安も長期金利高も落ち着いている。でも高市公約に自称アクセルはいたとしてもブレーキはいないのだ。高市さんは減税も積極財政も議会内にはほとんど摩擦がない。有権者に対してやらない、やれない言い訳は立たないけど、やれば円安インフレと長期金利上昇という、それこそ「意地悪やな」市場が待ち受けている。
高市さんは世界の首脳のなかでおそらく唯一、習近平さんと会うことができない。そのぶんトランプさんに近付かざるを得ないし、近付くとあれこれ要求される。約束した例の80兆円投資やけど、とりあえず5.5兆円ほどガス火力や原油輸出インフラに持ってきてくれへんかな(なぜかトランプが関西弁になっているけど)。いや、でも、それは採算性が。採算性やあれへんがな、中間選挙対策やがな。ほんで、ついでやけど「平和協議会」には入っていっときや。あと、防衛費やけど…、なんや、なんでもできるようになったんちゃうんか。
こんな風におちょくってはいるけれど、さすがに投開票日の夜は気が塞いだ。そんなときは、とにかくネットニュースを遮断する。精神衛生上、とても大切なルーティンだ。そして政治が暗く感じたときには、「ちゃんとした保守の論客」の著書を読むと健康に良いという効能が認められている。なんかないかなと本棚の前をうろつくと、なんとも適切な本を見つけた。佐伯啓思著『さらば、民主主義』、これこれ、これは効きそうだ。手に取るとその背後から奇遇にも西部邁の本が見えた。たしか佐伯先生の指導教官は西部さんだったはずだ。その西部さんの本を手に取ってタイトルを見たとき、にやりと肩の力が抜けたものだ。いわく、『世論の逆がおおむね正しい』だとさ。
日誌資料
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01/29
- ・メタ、10~12月9%増益 マイクロソフト6割増益
- ・FRB、利下げ見送り 4会合ぶり、反対2票 議長、政権圧力に危機感 <1>

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01/30
- ・食品消費税ゼロ 反対88% 経済学者調査 社会保障不安定に「インフレ加速も」
- ・米、日銀利上げ要請削除 為替報告書 「監視国」指定は継続
- ・アップル最高益6.4兆円 新iPhone好調 10~12月
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01/31
- ・FRB議長にウォーシュ氏 トランプ氏氏名 利下げ継続へ <2>
- 「タカ派」議長 市場警戒 ドル高進行、金11%安 マネー先細り観測

- ・日本の労働力、なお不足 初の7000万人超え、女性・高齢者増 昨年
- 短時間勤務が伸びる 外国人労働者初の250万人 3年連続10%超増加
- ・英中、金融・投資で協力 北京で首脳会談 関税下げ合意 脱「氷河期」関係安定へ
- ・エプスタイン文書 300万ページ追加公開 米司法省、作業終了
- ・国連が財政危機「7月までに運営費尽きる」 主因は米未払いか
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02/01
- ・日英、重要鉱物確保へ連携 首脳会談(31日東京) ドンロー主義意識し協調
- ・FRB次期議長ウォーシュ氏「タカ派」発言多く 量的緩和、過去に批判
- 舞台回したベッセント氏 「言いなり議長」回避
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02/02
- ・トランプ氏一族の仮想通貨企業 UAE王族、770億円出資 米報道
- ・デジタル人民元 利息付与 中国、「非ドル」決済拡大狙う <3>
- 企業の越境利用促す 中銀で初、国内普及に課題

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02/03
- ・金、4兆ドル吹き飛ぶ 「安全資産」投機集中の反動 利益確定売り膨らむ
- ・米、インド関税18%に下げ 両首脳 電話協議で合意 ロシア原油購入停止受け
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02/04
- ・農産物輸出 最高1.7兆円 昨年12%増、緑茶やブリ伸びる
- 先行きは日中関係が影 コメ、高騰で伸び率鈍化 パックご飯は好調
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02/05
- ・日欧とレアアース貿易圏 米提案、中国産を排除 「最低価格制を導入」
- ・「台湾問題、中国の懸念重視」 トランプ氏、習氏と電話協議
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02/06
- ・ビットコイン ピークの半値 6万2000ドル台 トランプ効果帳消しに <4>

- ・消費支出12月2.6%減 昨年のエンゲル係数 44年ぶり高水準
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02/07
- ・NY株、初の5万ドル台 1206ドル高 テック以外も上昇 <5>

- ・ドイツ貿易相手 中国首位に 昨年、2年ぶり 関税で対米輸出減
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02/09
- ・高市自民316戦後最多 中道惨敗49、維新は36 日経平均3000円超高
- ・経常黒字、2年連続最高 昨年11%増、約31.8兆円 海外投資で収益
- ・実質賃金4年連続減 昨年1.3%マイナス 物価に追いつかず
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02/10
- ・首相、消費減税夏前に設計 改憲発議「粘り強く」
- ・円上昇、一時155円半ば 「中国が米国債抑制」報道
- ・香港紙創業者 黎智英氏に懲役20年 国安法裁判「外国と結託」 香港高裁判決
- ・タイ保守派与党が躍進 総選挙、予想外の議席3倍 国境紛争が追い風に
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02/11
- ・ステーブルコインで株売買 24時間・即時 大手証券・3メガ銀が連合
- ・「党ゼロ」国会 弱る点検機能 首相1強、与野党の抑え効かず
- 財政規律の維持 市場反応重み増す
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02/12
- ・米雇用1月13万人増 市場予想上回る 失業率4.3%に低下
- ドル高一服、米株小動き 円上昇、一時152円台半ば
- ・国の借金、ノンバンク頼み 残高4700兆円 先進国の5割分保有 <6>
- 金利急変招く一因に 日本は3割程度

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02/13
- ・PayPay来月米上場 時価総額3兆円超 1割売り出し 海外スマホ決済開拓 <7>

- ・日産、最終赤字6500億円 今期、2期連続 構造改革費が重荷
- ・トランプ氏、北米貿易協定の離脱検討 譲歩狙い揺さぶり <8>
- カナダと対立 破談なら日本企業も影響

- ・韓国株最高値 初の5500台 取引時間12時間に拡大へ
- ・中国漁船、長崎沖で拿捕 水産庁 闘争疑い、船長逮捕
- ・NY株続落669ドル安 「SaaSの死」懸念やまず 医療・ゲームにも波及
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02/14
- ・ミュンヘン会議 「西半球」優先、亀裂修復探る <9>
- 欧州、安保で米つなぎ留め 独首相「対話が必要」

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02/15
- ・レアアース国産化へ一歩 南鳥島沖で泥の試掘終了 精製手法の確立目指す
- ・自民圧勝「円・国債売り」一服 財政規律の維持期待 <10>
- 対ドル、一時152円台に上昇 超長期金利、年末以来の低水準 消費減税には警戒心なお




